＜Bohr軌道＞

＜水素原子類似軌道＞

• 量子力学の厳密解
• 水素・水素類似原子 (1電子系 = He⁺, Li²⁺, Be³⁺, ... ) の厳密解
• n 同じ エネルギー同じ (s, p, d, ... 軌道が縮退)
  [資料2.3]
• 多電子系の近似解 (「軌道」の概念そのものが近似)

＜軌道節面＞

• 節面：波動関数(電子存在確率) = 0 の面
• 節面の数の総数 = n - 1
• 角度方向の節面の数 = l
  [資料1.4, 2.1, 2.2]
• 動径方向の節面の数 = n - l - 1
  [資料2.4, 2.5]

ex.)

軌道	角度方向節	動径方向節	合計
1s	0	0	0
2s	0	1	1
2p	1	0	1
3s	0	2	2
3p	1	1	2
3d	2	0	2

cf.) 分子軌道でも一般に節の多い軌道ほどエネルギーが高い
　節の数 古典的周波数, 1/(電子の運動周期) E = h

＜遮蔽＞

• 2s 軌道電子の感じる原子核の電荷(+)
  1s 電子の電荷(-)で遮蔽され小さくなる：有効核電荷 (Z_eff, Z*)
  [資料2.6]
• Z*(Li, 2s) = +1 (完全な遮蔽) 〜 +3 (遮蔽なし)
• Z*(Li, 2s) = 1.30 (Slater), 1.28 (Clementi-Raimondi)
  [資料2.7, 2.8]

＜Slaterの規則＞

Z* = Z_true - S [S: 遮蔽定数]
(2.3)　
1. 軌道を [1s] [2s, 2p] [3s, 3p] [3d] [4s, 4p] [4d] [4f] [5s, 5p] ... と分類
2. 問題の軌道よりも右側のグループの電子の遮蔽は 0
3. 同じグループの電子の遮蔽 0.35（1s は例外で 0.30）
4. (n-1) のグループは 0.85、それより前のグループは遮蔽 1
5. d, f 軌道を問題にする場合は、一つ前のグループと,それより前すべて 遮蔽 1

＜貫入＞

1. 多電子原子：なぜ E(2s) < E(2p) ？
   軌道の動径分布
   　2s は１つの節をもつ。[2p と比較して] 1s の内側に存在確立が高い
   [資料2.9]
   　 [2p と比較して] 2s 軌道は 1s の内側に貫入している
   　 [　〃　] 1s の遮蔽をうけにくく有効な核電荷が大きい
   　 [　〃　] エネルギーが低い
   cf. (2.1)式　
2. 同様に E(3s) < E(3p) < E(3d)
   [資料2.10]
   さらに E(4s) ≦ E(3d), etc.
   [資料2.11]
   第４周期 4s² の後に第１遷移金属周期
   [資料1.6-周期律表]
3. およその順序関係
   1s < 2s < 2p < 3s < 3p < 4s ≦ 3d < 4p < 5s ≦ 4d < 5p < 6s ≦ 4f ≦ 5d < 6p < 7s ≦ 5f ≦ 6d
   　(≦ の関係は微妙) 構成原理
   　ex.) Cr 原子の電子配置: 4s¹3d⁵
   　ex.) Fe 原子の電子配置: 4s²3d⁶ しかし Fe²⁺は 4s⁰3d⁶
   ＊ ClementiとRaimondi (CR)の有効核電荷: 貫入効果を含む

2.2.1 原子価軌道

ex.) C 原子：原子価 = 4 (cf. オクテット則)
• 2s, 2p：結合に関与 原子価軌道
  　　(原子価軌道の電子=価電子, 価電子数 4)
• 1s：内殻軌道 (内殻電子)

2.2.2 原子価軌道の周期律

1. 典型元素 (1, 2, 13-18族)
   

   ・周期律表() ... 原子価軌道エネルギー(), 原子価軌道の大きさ()

   [資料2.11]
   ex.)

   Z	3 (Li)	4 (Be)	5 (B)	(真の核電荷)
   Z*2s (完全遮蔽)	1	1	1	自分以外の電子による遮蔽が完全と仮定した場合
   Z*2s (Slater)	1.30	1.95	2.60	実際に近い値 (Slater)

   不完全な遮蔽の蓄積

   ・周期律表() ... 原子価軌道エネルギー(), 原子価軌道の大きさ( )
   　Z* の増大の効果 ≦ 主量子数増大の効果

2. 遷移元素 (3-12族)
   

   ・周期律表() ... 基本は同上 [エネルギー(), 大きさ()]
   　遷移周期中盤：性質類似　(cf.　8-10 族は 旧 VIII 族)
   　遷移周期後半：(n-1)d は内殻的(不完全遮蔽の蓄積) ... 化学的に安定
   　 11 族： (n-1)d¹⁰ ns¹, 12 族：(n-1)d¹⁰ ns² ... 1, 2族に類似
   　特に第６周期 (第３遷移系列)：(n-2)f 軌道の不完全遮蔽も加わる
   　 Pt, Au, Hg 安定

＜不活性電子対効果＞

周期律表で遷移金属に後続する典型元素は、 しばしば価電子数で予想されるより２小さい酸化数をとること。 ns 軌道の電子対が不活性であると解釈されるためこのように 呼ばれる。
　ex.) Sn^II(SnCl₂), Pb^II, Tl^I, In^I

[解釈]
　遷移周期 d 軌道の不完全遮蔽蓄積は後続典型元素に影響

[資料2.11]

　ns[貫入している]
　 (npに比べて) (n-1)d の遮蔽を受けにくい
　 内殻的・不活性

・第６周期：さらに (n-2)f の不完全遮蔽で特に不活性

・13, 14族で顕著
　16-17族ではnp自信の不完全遮蔽で顕著でなくなる