Chemkin-II 入力書式
三好 明
三好 明
この文書では Chemkin-II の入力ファイル書式について解説しています。
!----------------------------------------------------------------------- ! 'exmHCO01.inp' ! C-H-O system machanism based on ... !----------------------------------------------------------------------- ELEMENTS H C N O END !----------------------------------------------------------------------- SPECIES H2 H O2 O OH HO2 H2O2 H2O N2 CH3 CH4 ...(中略)... END !----------------------------------------------------------------------- THERMO CH3 121286C 1H 3 G 0300.00 5000.00 1000.00 1 0.02844051E+02 0.06137974E-01-0.02230345E-04 0.03785161E-08-0.02452159E-12 2 0.16437809E+05 0.05452697E+02 0.02430442E+02 0.11124099E-01-0.01680220E-03 3 0.16218288E-07-0.05864952E-10 0.16423781E+05 0.06789794E+02 4 END !----------------------------------------------------------------------- REACTIONS KJOULES/MOLE MOLECULES H + CH3 (+M) = CH4 (+M) 3.50E-10 0. 0. !94CEC (300-1000K) LOW /1.726E-24 -1.8 0./ ! for M=Ar TROE /0.63 61. 3315./ ...(中略)... END !-----------------------------------------------------------------------
ELEMENTS H O AR CL END例 2
ELEMENTS H O C N HE END
reac1 + reac2 + reac3 = prod1 + prod1 + prod3反応物、生成物の個数は 1 以上 3 以下です。反応物, 生成物の名前は、以下の特例を除いて、Species block に定義されたものと、 一致しなくてはなりません。
2OH = H2O2
H + H + M = H2 + M第三体が関与する反応の記述の詳細は後述します。
=>正反応の速度定数を与え、正反応のみを計算します。
= または <=>正反応の速度定数を与えますが、熱力学データから逆反応速度定数を 計算して、正逆の両反応を計算します。
A + B = C A + B => C高圧極限の速度定数が与えられているとして計算を行います。 実際にその反応が高圧極限にある必要はなく、高圧極限であることを示して いるわけでもありません。
A + B + M = C + M A + B + M => C + M低圧極限の速度定数が与えられているとして計算を行います。
A + B (+ M) = C (+ M) A + B (+ M) => C (+ M)圧力依存性を、補助入力から読み取って、漸下域の速度定数 を評価します。
A + B (+ M) = C (+ M) 2.3E14 0.0 156.2 LOW/ 6.3E27 -2.6 -54.3 /
A + B (+ M) = C (+ M) 2.3E14 0.0 156.2 LOW/ 6.3E27 -2.6 -54.3 / TROE/ 0.604 6980. 132. /低圧極限、漸下域の速度定数の低圧極限部分は、一般に希釈気体に よって、大きく変化するため、この効果を enhancement factor をして指定 することができます。 以下に例を示します。
A + B + M = C + M 6.3E27 -2.6 -54.3 CO/1.9/ H2/1.7/ CO2/3./ H2O/5./この例では、CO, H2, CO2, H2O に対して、1.9, 1.7, 3., 5. 倍の低圧極限速度定数を使うことを指定してします。漸下域の場合も、 同様な行を、補助入力の最後に付加することができます。
C3H6=C2H3+CH3 5.986E+30 -3.9888 107791. ! HPL PLOG / 0.1 3.075E+69 -15.9470 123807. / ! rrkm2014 PLOG / 1. 1.898E+71 -16.0387 128780. / PLOG / 10. 1.863E+69 -15.1393 131253. / PLOG / 100. 7.007E+61 -12.8256 128945. /
SENS CONP PRES 1.0 TEMP 1000. TIME 2.E-4 DELT 1.E-4 REAC H2 2 REAC O2 1 REAC N2 4 END一行に 1 つのキーワードを記述します。 '.' (ピリオド), '/' (スラッシュ), または '!' (感嘆符) で始まる行は注釈行と解釈されます。 最後の行に入力終了のキーワード 'END' を記述します。 行の先頭に空白を挿入することはできません。
CONP | 定圧 (CONstant Pressure) 断熱条件 |
CONV | 定容 (CONstant Volume) 断熱条件 |
CONT | 等温 (CONstant Temperature) 定圧条件 |
ICEN* | 0 次元内燃機関 (Internal Combustion ENgine) – 定速回転クランク・ピストン機構による 断熱圧縮・膨張条件 |
CGME* | コアガスモデル拡張 (Core Gas Model Extention) – 急速圧縮機のコアガスモデル計算 |
PRGV* | 体積変化プログラムを与えらた (PRoGrammed Volume) 断熱条件 |
VTIM# | 体積変化が時間の関数として与えられた (Volume as a function of TIMe) 断熱条件 |
PRGT* | 温度変化プログラムを与えらた (PRoGrammed Temperature) 定圧条件 |
TTIM# | 温度変化が時間の関数として与えらた (Temperature as a function of TIMe) 定圧条件 |
TEMP | 初期温度 [K] |
PRES | 初期圧力 [atm] |
REAC | 反応物の名前とモル数
複数指定可能. 化学種の名前は chem.inp の Species block
に定義されていなければならない. モル数は senkin 内部で
合計が 1 になるように規格化される.
|
TIME | 終了時間 [s] |
DELT | 出力時間間隔 [s]
senk.out および tign.out のみに影響します. save.bin
には, 常にすべての計算ステップの結果が出力されます.
|
REST | リスタート
初期条件を rest.bin から読み込むよう指定します.
この場合 TEMP, PRES, REAC 入力は不要で, あっても無視されます.
|
TRES | リスタート時間
リスタートでは通常, 時間を rest.bin から読みますが,
このキーワードで、開始時間 [s] を変更することができます.
|
ATOL | 独立変数の絶対許容誤差
senkin 内部では濃度は質量分率で計算されることに注意.
デフォルトは 1E-20 |
RTOL | 独立変数の相対許容誤差 (デフォルト : 1E-8) |
ATLS RTLS | 感度係数の絶対・相対許容誤差 (デフォルト : 1E-5) |
TLIM | 着火判定温度 (デフォルト : 初期温度 + DTLM [下記]) |
DTLM | 着火判定温度上昇 (デフォルト : 400 K) |
CONP
, CONV
, ICEN
, ...)
で指定することが可能です.
混合過程の熱力学は, 選択された反応条件に従って計算されます. すなわち,
体積を指定している場合 (CONV
,
ICEN
, CGME
, PRGV
, VTIM
)
は内部エネルギー保存, 圧力を指定している場合 (CONP
) はエンタルピー保存
が仮定されます. 温度を指定した条件 (CONT
,
PRGT
, TTIM
) では等温混合になります.
LQNF | 非燃料液体 (LiQuid of Non-Fuel)
INJL で噴射する液体が燃料でないことを指定するオプションです.
このオプションを指定することで INJL で指定する噴霧量が当量比ではなく,
系全体に対する質量比と解釈されるようになります.
|
INJL tinj τ φ finj | 液体噴射 (INJection of Liquid)
噴霧の局所気体モデリングに使用します. 液体はただちに蒸発して
気体になると仮定して, 反応条件に従って温度と組成が計算されます.
噴霧開始時間 (tinj [s]), 期間 (τ [s]),
当量比換算の噴霧量
(φ), 噴射速度の時間変化の関数形 ( finj )
を指定します.
必ず, 液体と対応する蒸気の化学種名と組成を, 下の LIQU オプションで
指定しなければなりません.
液体の温度は TLIQ で指定します.
複数の INJL 行オプションで複数回の噴霧を指定することができます.
噴射時間関数 finj には以下の 3 種類が指定できます.
(k = τ −1)
例
REC (矩形; RECtangular) : f = k
[0, τ)
EXP (指数関数; EXPonential) : f = k e−k t [0, ∞) RND (立ち上がり/減衰関数; Rise aNd Decay) : f = k 2 t e−k t [0, ∞) INJL 1e-3 2e-5 0.2 EXP INJL 3e-3 2e-5 0.2 RND |
LIQU Nliq Nvap xm | 液体組成 (LIQUid composition)
INJL で噴射する
噴霧液体の化学種名 (Nliq), 対応する蒸気の化学種名
(Nvap),
モル分率 (xm) を指定します. いずれの化学種も
インタープリター入力の species
ブロックに指定されいて, 熱力学データが存在しなければなりません.
以下の例に示すように, 複数の LIQU 行で PRF
のような混合燃料を指定することができます.
モル分率の和は自動的に 1 に規格化されるので, 合計が 1 でなくてもかまいません.
例1
! PRF90 mixture LIQU iC8H18(L) iC8H18 0.888729 LIQU nC7H16(L) nC7H16 0.111271例2 ! n-heptane LIQU nC7H16(L) nC7H16 1 |
TLIQ Tliq | 液体温度 (Temperature of LIQuid)
INJL で噴射する液体の温度 (Tliq [K]) を指定します.
省略した場合のデフォルトは 323.15 K です.
例
! 50 degree-C TLIQ 323.15 |
GSNE | 気体混合でエネルギー計算をしない (GaS mixing Neglecting Energy equation)
MIXG で混合する気体の温度(エネルギー)を無視して計算するオプションです.
このオプションを指定することで MIXG による温度変化はなくなり,
化学的な効果のみが計算されます.
|
MIXG tst τ y fmx Nf | 気体混合 (MIX Gas)
任意の組成・温度の気体を断熱的に混合します.
混合開始時間 (tst [s]), 期間 (τ [s]),
混合質量分率 (y), 混合速度の時間変化の関数形
(fmx),
リスタートファイル名 (Nf) を指定します.
混合する気体は予め senkin バイナリ形式で作成しておく必要があります.
複数の MIXG 行を指定することで同じ気体を複数回, あるいは異なる気体を
混合することが可能です. 混合時間関数 fmx
は上の INJL の噴射時間関数 finj と同様に
REC, EXP, RND の 3 種類が指定可能です.
任意の組成・温度の senkin バイナリ形式のファイルは,
sbrest, sbdump, sbgen, sbmod, sbhmix
などを利用して作成することができます. (詳細は
プログラムの概要 を参照)
例
MIXG 2e-3 2e-5 0.1 REC unburntgas.bin MIXG 5e-3 5e-5 0.1 REC burntgas.bin |
CMPR K | 圧縮比 (Compression Ratio)
エンジンシリンダ内容積の最大値の最小値に対する比.
デフォルトは 18.4 |
RPM N | エンジンの回転数 [rpm] (デフォルト : 1500) |
LOLR R | 連接棒長/クランク半径比
連接棒 (connecting rod) の長さとクランク (crank) 半径の比. デフォルトは 3 |
VOLC Vc | 隙間体積 (clearance volume) [cm3]
上死点におけるシリンダ内容積.
熱損失を考慮しない場合, この値は計算に本質的な影響は与えず
総質量の出力にのみ影響する.
デフォルトは 100 cm3 |
DEG0 θ0 | 初期クランク角 [単位: 度 / 上死点 = 0] (デフォルト : 180度) |
ICHT a m n B Tw | 熱損失パラメータの指定
レイノルズ数およびプラントル数と, ヌッセルト数の関係 Nu = a Re m Pr n の係数, およびシリンダボア直径 B [cm], 壁面温度 Tw [K] を与える. 内表面積の計算に Vc が使用されることに注意. |
CCVF c1 k1 c2 k2 c3 k3 |
圧縮後の体積変化パラメータの指定
(Core-Gas Model Coefficients for Volume Function)
圧縮後のコアガスモデルによる仮想的な体積変化を次の経験式で近似します.
|
||||||||||||||||||||||
CCVC t1 V1 t2 V2 t3 V3 t4 V4 |
圧縮過程の体積変化パラメータの指定
(Core-Gas Model Coefficients for Volume Change during Compression)
圧縮過程のコアガスモデルによる仮想的な体積変化を以下の経験式で近似します.
圧縮後の体積変化のパラメータ (c1 ~ c3,
k1 ~ k3) も使用しますので,
必ず CCVF オプションも指定してください.
ここでの体積は, コアガスモデルの体積を初期体積 (圧縮前) で割ったものです.
したがって, 時間 0 における体積は必ず 1 になります. 時間 t の単位は s [秒] です.
このオプションを指定した場合は初期温度・圧力 (TEMP, PRES)
には圧縮前の温度・圧力を指定しなければならないことに注意して下さい.
CCVC オプションと CCVF オプションで指定される体積変化の概形を右図に示します.
CCVC オプションでは, 関数形が変わる接続点の時間と体積を
(ti, Vi)
で指定します. 時間の 0 は最初の区間の V−1
が2次関数でよく近似されるように決定します.
第2区間は V が直線, 第3区間は V−1 が直線で近似され,
第4区間は V−1 の二次関数になっています.
t4 以降は V−1 が CCVF
で指定される減衰関数になります.
|
VPNT t V | 体積指定点 (volume point)
時間 t [s] における、体積 V [cm3]
を指定します. このオプションを複数指定することで,
体積変化を表現します. PRGV 拡張では指定した時間の間の体積は,
線形補間で与えられます.
時間 0 における体積を指定しない場合, デフォルトで時間 0 における体積は 1
[cm3] になります.
時間 t には 負の値は許されません. |
TPNT t T | 温度指定点 (temperature point)
時間 t [s] における、温度 T [K]
を指定します. このオプションを複数指定することで,
温度変化を表現します. PRGT 拡張では指定した時間の間の温度は,
線形補間で与えられます. 時間 0 における温度は必ず
'TEMP' キーワードで指定した値になります. 従って, 時間 t
には 0 や負の値は許されません. |
===== sb2c (sbin2csv.f) Control file ===== [ TIME OUTPUT CONTROL: (s ms us) atol=# rtol=# mind=# maxd=# sent=# ] us mind=1e-6 maxd=1e-5 atol=1e-15 rtol=.05 [ CONC OUTPUT CONTROL: all selonly none molecules/cc molefrac ] molecules/cc selonly H O OH HO2 H2 O2 [ SENS OUTPUT CONTROL: all none (or species name list) ] H O TEMP3つのブロック (TIME OUTPUT CONTROL, CONC OUTPUT CONTROL, SENS OUTPUT CONTROL) それぞれに 時間出力, 濃度出力, 感度係数出力 制御を記述します. 第1行と '[' で始まる行はコメント行で変更しても構いませんが 削除してはいけません. キーワードは大文字/小文字を区別しませんが 化学種の名前では大文字/小文字が区別されることに注意して下さい.
s | 秒 (second) |
ms | ミリ秒 (millisecond) |
us | マイクロ秒 (microsecond) |
atol | 絶対濃度変化の許容限界 (absolute tolerance)
濃度の単位はモル分率. 絶対濃度が atol 未満の化学種の
濃度変化は無視して出力時間幅の決定では考慮しません.
例えば 'atol=1e-15' はモル分率が 1 × 10−15
未満の化学種の濃度変化は出力時間幅の決定で無視されます.
指定しなかった場合の規定値は 1.0E-16 です.
|
rtol | 相対濃度変化の許容限界 (relative tolerance)
前回の出力から、いずれかの変数の相対変化が rtol よりも大きくなった
時点で次の出力を行います. 例えば 'rtol=.05' は許容相対変化が
5% です. 指定しなかった場合の規定値は 0.1 (10%) です.
|
mind | 最小出力時間刻み (minimum delta-t)
(単位: 秒) atol, rtol の指定に関わらず出力の刻み幅は mind
以下にならないよう制御されます. 例えば 'mind=5e-6'
では最小幅は 5 マイクロ秒となります.
指定しなかった場合の規定値は、1.0E-05 (10 microseconds) です.
|
maxd | 最大出力時間刻み (maximum delta-t)
(単位: 秒) atol, rtol の指定に関わらず出力の刻み幅は maxd
以上にならないよう制御されます.
ただし, 内部積分刻みが大きい場合にはそれ以下にはなりません.
指定しなかった場合の規定値は 1.0E+03 (1000 seconds) です.
|
sent | 感度係数出力時間 (sensitivity output time)
(単位: 秒) このオプションを指定しない限り、
他の出力頻度制御で決まるすべての時間について、感度係数が出力されます.
このオプションを指定すると、感度係数は、指定した時間1点についてのみ、
出力されます.
|
molecules/cc | molecules cm−3 |
molefrac | モル分率 (mole fraction) |
none | なし |
selonly | 選択したもののみ |
all | すべて |
none | なし |
all | すべて |
===== rxnc (rxncntrb.f) Control Input File ===== [ (Time points to be investigated in s) time1, time2, ... ] 2.5e-4 1.78e-4 5e-5 1.e-6 [ (species to be investigated) name1, name2, ... ] H O HO2 [ options (atol, min%, top#, sbin, ocsv) ] atol=1e-20 min%=0.1 sbin=save.bin第 3 行が時間指定, 第 5 行が化学種指定, 第 7 行がオプション指定です. 時間指定行では計算を行う時間を s (秒) の単位で指定します (複数可). 化学種指定行では計算を行う化学種の名前 (複数指定可) を指定します.
sbin=ファイル名 | senkin のバイナリ出力ファイル名を指定します. 省略時のデフォルトは save.bin です. |
top#=n (整数) | 寄与の大きい上位 n 個の反応を出力します. |
min%=r (実数) | 寄与が r % 以上の反応を出力します. |
atol=ATOL | senkin 入力で指定した絶対精度と同じ値を入力して下さい. デフォルトは senkin 入力と同じ 1E-20 です. |
ocsv | このオプションが指定されると寄与率は、 .csv ファイル にも出力されます. |
AR 120186AR 1 G 0300.00 5000.00 1000.00 1 0.02500000E+02 0.00000000E+00 0.00000000E+00 0.00000000E+00 0.00000000E+00 2 -0.07453750E+04 0.04366000E+02 0.02500000E+02 0.00000000E+00 0.00000000E+00 3 0.00000000E+00 0.00000000E+00-0.07453750E+04 0.04366000E+02 4