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2006
物理化学
及び演習 II
1. 衝突速度
2006 物理化学及び演習 II - 演習 1

1. 衝突速度

— もりうち機構の反応速度定数 (Na + Cl, Na + Cl2) —
  • 衝突理論 (アトキンス 27.1 章) の演習問題

演習問題

概要


図 1-2. 「もりうち」機構
  分子直径と平均並進速度のみから導かれる単純衝突理論は、 分子を硬い球であると近似したもので 「剛体球衝突理論」 と呼ばれる。   気相の化学反応は、 分子衝突が起こらなければ起こらないので、衝突速度は反応速度の 上限値であると考えることができる。
  この演習で扱う 「もりうち機構」 の反応は、 ある限界距離 rc 以下に Na と Cl が近づくと引力が働いて反応が起こる (図 1-2)、 というもので、 剛体球衝突理論の理論式で、 反応速度定数が記述される。   ただし、多くの場合は 「もりうち機構」 は定性的な説明であって、 反応速度定数の、 定量的な推定や議論に耐えるものではない。

補足説明と演習のヒント


図 1-3. IP − EA
  • (1-2) 式の IP − EA は Na + Cl と Na+ + Cl のエネルギー差に相当する (反応 R1 の場合; 図 1-3 参照)。
  • (1-2) 式の最後の項はクーロン引力で、ここでは SI 単位系での式を示した。 分母の 4πε0 がない式を目にすることがあるが、これは cgs-esu 単位系の式である。 SI 単位で計算する場合は、 分母の 4πε0 を忘れてはならない。
  • 物理量は最も一般的に用いられる単位で示したため、 単位の換算が必要である。 以下を参照せよ。
    • 1 [eV] = e [C] 1 [V] = e [J] = 1.6022 10−19 [J]
        or 1 [J] = e−1 [eV]
    • 1 Å = 10−10 m = 10−8 cm
    • [C2 F−1 m = J m] = [eV m] = 14 ~ 15 [eV Å]     (下線部は自分で計算してみよ)
    • 1 [amu] = 1 [g mol−1] = 10−3 / N A [kg (molecule−1)]

    • = 145 ~ 150 [m s−1]     (下線部は自分で計算してみよ)
  • 反応 (R2) に関しても、考え方は反応 (R1) と同様。 生成物が NaCl2 ではなく、 NaCl + Cl となっているが、 反応速度定数は Na と Cl2 が近づくところで決定される。 (図 1-4 参照)

    図 1-4. 反応 (R2)
  • 答の値は、反応 (R1), (R2) とも以下の範囲にある。
    • [問題 1-1] : rc = 1 ~ 10 Å
    • [問題 1-2] : = 100 ~ 1000 m s−1
          k = 10−10 ~ 10−8 cm3 molecule−1 s−1

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