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2000物理化学及び演習II - 問題3

[演習問題 3] 反応速度定数 (HCN HNC)

遷移状態 TS* を経由して進行する反応 A TS* B の反応速度定数は、遷移状態理論によれば、

で与えられる。ここで Q(A), Q(TS*) は A, TS* の (単位体積あたりの) 分配関数、 E* は遷移状態と反応物のエネルギー差 (TS* の A を基準にしたエネルギー) である。この式は平衡定数の式 [演習問題 2] と類似している。
今ここでは、HCN 分子の異性化反応 を考えることにすると、平衡定数の評価の場合 [演習問題 2] と同様に、(1) 式中の分配関数の比の部分は、振動と回転の分配関数のみで書き表される。 振動分配関数は、演習問題2と同様に、次式で評価される。


[問題 3(a)]
 HCN は4つの振動自由度を持ち、振動の波数は 794, 794, 2177, 3286 (cm-1) である。遷移状態は2つの振動自由度を持ち振動波数は 1999, 2554 (cm-1) である。1000 K および 3000 K における、振動分配関数の比 Qvib(TS*) / Qvib(HCN) を計算せよ。

HCN 直線分子の分配関数は、演習問題 2 と同様に、次式で評価される。

波数単位で与えられている回転定数を B' とすると、B = hc0B' となるので、 となる。
遷移状態 TS* は三角形の構造をとるため、3次元の回転自由度を持つ。 非直線分子の回転分配関数は、直線分子の場合と同様、 和を積分に置き換えることで、次式で近似される。 ここで、A, B, C は3つの回転主軸の周りの回転定数である。上と同様に、 波数単位で与えられている回転定数を、A', B', C' とすると、


[問題 3(b)]
 HCN は直線分子であり、回転定数は 1.534 [cm-1] である。遷移状態 TS* は非直線分子であり、3つの回転定数は、 13.92, 1.875, 1.652 [cm-1] である。1000 K および 3000 K における、回転分配関数の比 Qrot(TS*) / Qrot(HCN) を計算せよ。
 TS* のエネルギーは HCN よりも、187.9 kJ mol-1 高い。 1000 K および 3000 K における、反応(2)の反応速度定数 [単位: s-1] を求めよ。

一般に、正方向の反応速度定数 kf と逆反応の反応速度定数 kr は平衡定数 KC と、

の関係がある。


[問題 3(c)]
 遷移状態理論による反応速度定数の式と、演習問題 2 の平衡定数の式は、(7) 式と矛盾しないことを示せ。
 また演習問題 2 で求めた平衡定数を使って、1000 K および 3000 K における、逆反応 HNC HCN (-2) の反応速度定数 [単位: s-1] を計算せよ。