(c) 2000 by A. Miyoshi, Univ. Tokyo
All rights reserved.
[Top]
問題: [1-1] [1-2] [1-3] [2] [3]
2000物理化学及び演習II - 問題2

[演習問題 2] 化学反応の平衡定数 (HCN HNC)

反応 A B の濃度平衡定数は、

で与えられる。ここで [A]e, [B]e は平衡における A, B の濃度、 Q(A), Q(B) は A, B の (単位体積あたりの) 分配関数、E は反応のエネルギー差 (B の A を基準にしたエネルギー) である。
分子の(単位体積あたりの)分配関数は、 分子のすべての運動の分配関数の積で表わされる。 Qtrans, Qelec, Qvib, Qrot はそれぞれ、並進運動の (単位体積あたりの) 分配関数、電子状態の分配関数、振動分配関数、回転分配関数である。
今ここでは、HCN 分子の異性化反応 を考えることにする。HCN も HNC も一重項の分子であり、 電子状態の分配関数はいづれも1である。 並進の分配関数は質量のみに依存し、両者の質量は等しいので、 考えなくてよい。したがって、(1) 式中の分配関数の比の部分は、 振動と回転の分配関数のみで書き表される。 分配関数は、分子の個々の状態の多重度をボルツマン因子を掛けて 足しあわせたものである。 振動の分配関数は、振動自由度が1つしかない2原子分子では、 となる。


[問題 2(a)]
 (6) 式の和が等比級数であることから、次式を導け。

m 個の振動自由度がある多原子分子では、(6') 式を個々の振動の振動数 i について計算して、 掛け合わせたものになる。


[問題 2(b)]
 HCN と HNC はいづれも4つの振動自由度を持ち、振動の波数は HCN が 794, 794, 2177, 3286 (cm-1)、HNC が 484, 484, 2062, 3655 (cm-1) である。1000 K および 3000 K における、 振動分配関数の比 Qvib(HNC) / Qvib(HCN) を計算せよ。 次式を用いると計算が効率的になる。

直線分子は2次元の回転の自由度を持ち、(5) 式の和を積分に置き換えることで、次の式で近似できる。


[問題 2(c)]
 HCN と HNC はいづれも直線分子であり、その回転定数は、それぞれ 1.534 (HCN)、1.555 (HNC) [cm-1] である。回転分配関数の比 Qrot(HNC) / Qrot(HCN) を計算せよ。
 HNC のエネルギーは HCN よりも、49.8 kJ mol-1 高い。 1000 K および 3000 K における、HCN と HNC の平衡定数、 KC = [HNC]e / [HCN]e を求めよ。