何人かの人から、過去問の解答が欲しいというリクエストを頂きました。 残念ながら試験直前に言われても、 受講者全員に確実に配布できないのでお断りしています。 特定の人や特定のクラスの人に便宜をはかることは、(進学振分けにも関係する) 試験の平等に反しますので、ご容赦願います。
そうはいっても電子メールでの質問はお答えすることにしていますので、 「この問題のここがわからない」という程度の質問には、 2〜3お答えしています。 どれだけの人が試験までにこのページを見ることができるかわかりませんが、 既にお答えした質問と解答についてはここに掲載することにしました。
(2006年9月1日)
2005年度過去問 Q & A
Q. (問題 A4)
いったん 298 K の水(l) を 373 K にして蒸発させ、
そこから水(g) を 298 K に下げることを考えて、
ΔvapH(T=298) =
Cp,m(l) × (373 − 298)
+ ΔvapH (T=373) +
Cp,m(g) × (298 − 373)
という解法を考えたのですが、正しいでしょうか?
A.
よいと思います。 H は状態量なので
どのような経路を使って計算しても、正しい値が得られます。
[補足] 問題 A では、
ΔvapH°(Tb)
が与えられていて、A2 で
ΔvapS°(Tb) が
求められます。
A4 では、これから T = 298 K の
ΔvapH°(T=298)
ΔvapS°(T=298) を Cp
一定を仮定して求めることになります。
これには、Cp の定義から得られる
H (liq, T=Tb) −
H (liq, T=298) =
∫Cp(liq)dT
および (3.4) 式から得られる
S (liq, T=Tb) −
S (liq, T=298) =
∫[Cp(liq) / T]dT
などを用います。
(Cp が定数であれば,積分は解析的に出ます)
Q. (問題 A5)
水の化学ポテンシャル
μ (liquid) の求め方がどうしても分かりません。
何かヒントを出していただけないでしょうか?
A.
- 純物質の化学ポテンシャル = モルギブスエネルギー (4.20式) です。
- A4 の最後で Gm°(gas) − Gm°(liquid) を求めました。
- A4 の最後で Gm°(gas) − Gm°(liquid) を求めました。
Q. (問題 B1)
演習 4.1 では (最大非膨張仕事) > (最大仕事) となりました。
そこで今までは
B1(c) の解法が間違っているのか、それとも今まで考えてきた仕事の定義、 どちらが間違っているのでしょうか??
最大非膨張仕事 = 膨張仕事 + 非膨張仕事
最大仕事 = 膨張仕事 のみ
と考えていました。
一方 B1(c) についてですが、 (最大仕事) > (最大非膨張仕事)
となりました。最大仕事 = 膨張仕事 のみ
B1(c) の解法が間違っているのか、それとも今まで考えてきた仕事の定義、 どちらが間違っているのでしょうか??
A.
用語の意味から、あくまでも
仕事 = 膨張仕事 + 非膨張仕事
です。 ただし、取り出せるすべての仕事が
正の値をとるわけではないことに注意して下さい。
演習 4.1 ではあえて、体積が減少する反応を例にあげています。
気体から液体の水が出来る場合には、系の体積が減少するので
系から取り出せる膨張仕事は負になります。
このために
最大非膨張仕事 > 最大仕事
となるわけですが、 B1 の問題では体積が増加するので
最大非膨張仕事 < 最大仕事
となります。