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2003 物理化学 II - 3章 - 補足 A
3.A 補足−回転量子化と回転準位の多重度
- 回転運動の量子化に関しては、Atkins 12 章 - 回転運動
(邦訳第6版では p. 353-, 第4版では p. 482-) を参照せよ。
- 紛らわしいことであるが、講義中で「二次元回転子」と呼ぶ、
直線分子の回転運動は、Atkins 12 章では「三次元の回転」に相当することに
注意せよ。
[多重度]
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図 3.a1 水素原子軌道エネルギー |
- 回転運動の量子力学解に不慣れな場合は、その波動関数が水素原子の
「軌道」と類似であることに気づくと、理解しやすいかもしれない。
- 水素原子の 1s 軌道 (方位量子数 = 0)
は縮退していないが、2p 軌道 ( = 1) は
3 重に縮退している。このことは「電子の入れ物」が
2px, 2py, 2pz の
3 通りあると解釈される。
一般に方位量子数 の軌道は
2 + 1 重に縮退している。
[例えば d 軌道 ( = 2) は 5 重縮退]
- 直線分子の回転運動の量子力学解は、水素原子軌道と似ている。
回転波動関数は球面調和関数である。水素原子の波動関数 (軌道)
の角度方向の分布も球面調和関数であるが、動径方向にも分布を持つ点で、
回転波動関数とは異なる。
- 回転量子数 = 0 の波動関数は 図 3.a2 の
s 軌道と同じ「形」をしており、 = 1, 2
の波動関数は、それぞれ p, d 軌道と同じである。
(異なる記号が使われるが回転運動の も、
水素原子軌道の も角運動量の量子数である)
- 回転量子数 の状態が
2 + 1 重に縮退していることは、水素原子の
p, d 軌道が 3, 5 重に縮退していることと全く同様で、
異なる波動関数の状態が同じエネルギーを持つことに相当する。
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s 軌道 | p 軌道 | d 軌道 |
図 3.a2 水素原子軌道の形 |