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物理化学 II - 2002 年度試験問題

・ノート・教科書等持込不可
・電卓使用可 (なくても解答可能
  忘れても貸し出し等は行わない)
・試験時間は90分 (10:15-11:45)
  遅刻限度30分 (10:45)
平成14年度 物理化学 II 試験問題

問題 A

A1. 臭素分子 Br2 の振動の波数は 324 cm-1 である。温度 310.8 K の熱平衡状態において、 振動量子数 = 1 の状態は振動基底状態 ( = 0 の状態) に対して何%存在するか? 回転定数は振動状態に依存せず、一定であると仮定してよい。 (310.8 K において = 216.0 cm-1 である)
A2. 濃度 6.93 1016 molecules cm-3 の気体オゾン (O3) を封入した、 光路長 1 cm の吸収セルで波長 250 nm の吸収を測定したところ、透過率は 50 % であった。気体オゾンの 250 nm における吸光係数 (吸光断面積; 底は ) を cm2 (molecule-1) の単位で求めよ。
A3. ある V(III) [三価バナジウム] 錯体の磁化率の測定から 磁気モーメントが 2.83 B であることが分かった (B はボーア磁子)。 磁気モーメントは主に電子スピンによるとして、V(III) の不対電子数を推定せよ。
A4. 以下の ()-() の遷移を波長の長い順に並べよ。
  () H 原子の Lyman- 遷移 (電子遷移 : 2p 軌道 1s 軌道)
  () HF 分子の純回転遷移
  () H35Cl 分子の振動遷移 (振動量子数 1 0)
  () D35Cl (2H35Cl) 分子の振動遷移 (振動量子数 1 0)

問題 B

B1. 以下の (1)-(4) の分子振動について赤外活性・ラマン活性 を判別し、回答例のように活性を○、不活性を×で答えよ。
  [ 回答例 ... (0) 赤外○、ラマン× ]
  (1) HCN (直線) 2 (変角振動)
  (2) CH3F 1 (対称 C-H 伸縮 = 3つの C-H 結合が同時に伸縮)
  (3) CO 伸縮振動
  (4) SF6 (正八面体構造) 1 (全対称伸縮 = すべての S-F 結合が同時に伸縮)
B2. ある温度におけるスペクトルから HCN 分子 (直線分子, 回転定数 1.534 cm-1) の回転量子数 = 16 の状態の = 0 の状態に対する存在比は 4.455 と測定された。剛体回転子近似のもとで, 測定の行われた温度を求めよ。
B3. 調和振動子近似では、振動基底状態 (振動量子数 = 0) から = 1 の状態への赤外吸収は許容であり、 = 0 から = 2 の状態への吸収は禁制である。 このことを、二原子分子の振動を例にとり、振動座標 ( = - , : 核間距離, : 平衡核間距離) に沿った双極子モーメントと振動波動関数の特徴を示した上で説明せよ。
B4. 以下の (1)-(4) の分子について純回転遷移活性 ・回転ラマン活性を判別し、回答例のように活性を○、不活性を×で答よ。
  [ 回答例 ... (0) 純回転×、回転ラマン○ ]
  (1) F2
  (2) CH3F
  (3) CO2
  (4) SF6 (正八面体構造)
B5. 分子 AB には基底状態 X (多重度 Xelec = 1, 回転定数 X = 2.78 cm-1) より 139 cm-1 高エネルギーに励起状態 A (Aelec = 3, A = 5.56 cm-1) が存在する。温度 = 400 K における反応 AB(X) AB(A) のエントロピー変化 ( / ) を求めよ。 分子振動の振動数は大きく、その寄与は無視してよい。


別紙資料

1. 対数・指数・平方根

0.1 0.2 0.3 0.5 1.5 2.0 3.0 10 50 100
自然対数 ln() -2.303 -1.609 -1.204 -0.693 0.405 0.693 1.099 2.303 3.912 4.605

-3.0 -2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.5 1.0 1.5 2.0 3.0
指数関数 exp() 0.0498 0.135 0.223 0.368 0.607 1.65 2.72 4.48 7.39 20.1

0.1 0.5 1.5 2.0 3.0 5.0 15.0
平方根 0.316 0.707 1.225 1.414 1.732 2.236 3.873

2. 物理定数など (有効数字3桁)

= 3.14 (円周率)     0 = 3.00 108 m s-1 (真空中の光速)
= 6.63 10-34 J s (プランク定数)   A = 6.02 1023 mol-1 (アボガドロ数)
= 1.38 10-23 J K-1 (ボルツマン定数) = 0.695 cm-1 K-1
(cm-1 をエネルギーの単位とした場合)
= 8.31 J K-1 mol-1 (気体定数)   B = 9.27 10-24 J T-1 (ボーア磁子)

3. 重要な式

ランベルト-ベール則     (底 10) : ,   (底 e ) :
2 粒子 (質量 1, 2) の換算質量 :
調和振動子の振動数 :
調和振動子のエネルギー準位 : , = 0, 1, 2, ...;
二原子分子の慣性モーメント :
二次元剛体回転子のエネルギー準位; 多重度 :
= 0, 1, 2, ...
;  
回転定数   (エネルギー単位) : ,   (波数単位) :
ボルツマン分布 :
反応 A B の平衡定数 :
電子状態 (多重度 gelec ) の
分配関数とエントロピー :
,
調和振動子近似の振動分配関数 :
二次元剛体回転子の分配関数,
エントロピー, 内部エネルギー :
, ,
三次元並進分配関数 : , (相対並進) :
誘電率 (デバイの式) とモル分極 : ,
磁気モーメントのスピンオンリー式 : , = 2.00
電子 1 個のスピン量子数 :