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2001 物理化学 II - 模擬試験問題

・電卓を使用してもよい
・ノート・教科書などは持ち込み不可
物理化学 II 模擬 試験問題

    以下の問に答えよ。必要に応じて、 別紙資料の数値・式を参照せよ。

Q1. あるカルボニル化合物のシクロヘキサン溶液 (濃度 52.3 mmol dm-3) の吸収を波長 280 nm で測定した。 光路長 1 cm の吸収セルで透過率は 30.0 % であった。 モル吸光係数 (底 10) を計算し dm3 mol-1 cm-1 の単位でかけ。

*Q2. 以下の (1)-(5) の遷移は (a)-(e) のどの波長領域に現れるか? 記号 (a)-(e) で答えよ。
(1) N2O 分子の純回転遷移
(2) O3 (オゾン) のハートレー帯吸収
(3) H2O 分子の O-H 対称伸縮振動遷移
(4) HCl 分子の振動遷移
(5) Na 原子の D 線 (3s 3p 励起) 遷移
  波長領域: (a) 15〜100 nm, (b) 100〜350 nm, (c) 400〜800 nm, (d) 1〜50 m, (e) 200m〜100mm

Q3. 調和振動子近似で = 0 と = 2 の状態間の赤外振動遷移は禁制である。 この理由を説明せよ。

Q4. 二原子分子 AB の J = 0 から J = 1 への吸収が、 波数 33.8 cm-1 に観測された。 これから A-B 結合距離を求めよ (単位 , 1 = 10-10 m)。 AB の換算質量は 2.0 amu であり = 16.9 amu 2 cm-1 である。

Q5. 直線分子の J = 0 と J = 2 の回転状態間の純回転遷移は禁制である。 この理由を説明せよ。 また、二原子分子の純回転遷移は古典回転周波数に、 回転ラマンシフトは古典回転の2倍の周波数に現れる理由を説明せよ。

Q6. 以下の (1)-(4) の分子振動について赤外活性・ラマン活性を判別し、 回答例のように活性を○、不活性を×で答えよ。
  回答例 ... (0) 赤外○、ラマン×
(1) CO2 (直線構造) 3 (反対称伸縮)
(2) N2 伸縮振動
(3) CH4 (メタン/正四面体型) 1 (全対称伸縮 = 4つの C-H 結合が同時に伸縮)
(4) HCl 伸縮振動
(5) NO2 (二等辺三角形構造) 1 (対称伸縮振動)

Q7. Cl 原子には、基底状態 (多重度 4) より 880 cm-1 エネルギーの高い励起状態 (多重度 2) が存在する。 温度 317 K のボルツマン平衡における、 励起状態の基底状態に対する存在比を求めよ。 この温度において kT = 220 cm-1 である (k はボルツマン定数)。

Q8. 同じ温度における、H2, HD, D2 分子の回転分配関数の比を求めよ。

*Q9. 塩素分子 Cl2 の振動の波数は 556 cm-1 である。 温度 400 K の平衡状態において、振動量子数 = 1 の状態の = 0 の状態に対する存在比を求めよ。 400 K において kT = 278 cm-1k はボルツマン定数)であり、 回転定数は振動状態に依存しないとする。

Q10. 剛体回転子近似のもとで CO 分子 (回転定数 1.92 cm-1) の 303.9 K のボルツマン平衡における回転量子数 J = 10 の状態の回転基底状態 (J = 0) に対する存在比を求めよ。 この温度において kT = 211.2 cm-1 である (k はボルツマン定数)。

*Q11. ある分子の磁気モーメントは 1.73 B である (B はボーア磁子)。 磁気モーメントは主に電子スピンによるとして、 この分子の不対電子数を推定せよ。


別紙資料

1.対数・指数・平方根

x 0.1 0.2 0.5 0.7 1.5 2.0
自然対数 ln(x ) -2.30 -1.61 -0.69 -0.36 0.41 0.69
x 0.2 0.3 0.5 0.7 2.0
常用対数 log10(x ) -0.699 -0.523 -0.301 -0.155 0.301
x -4.0 -2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.5 1.0 1.5 2.0
指数関数 exp(x ) 0.0183 0.135 0.223 0.368 0.607 1.65 2.72 4.48 7.39
x 0.1 0.5 1.5 2.0 3.0 5.0 15.0
平方根 0.316 0.707 1.225 1.414 1.732 2.236 3.873

2.重要な式

ランベルト-ベール則   (底 10): ,   (底 e ):
2粒子 (質量 m1, m2) の換算質量:
調和振動子の振動数:
調和振動子のエネルギー準位: , = 0, 1, 2, ...
二原子分子の慣性モーメント:
二次元剛体回転子のエネルギー準位: , J = 0, 1, 2, ...
回転定数   (エネルギー単位): ,   (波数単位):
二次元剛体回転子の量子数Jの準位の多重度:
ボルツマン分布:
反応 A B の平衡定数:
電子状態 (多重度 gelec ) の分配関数: Qelec = gelec
調和振動子近似の振動分配関数:
二次元剛体回転子の回転分配関数:
三次元並進分配関数: ,   (相対並進):
誘電率 (デバイの式) とモル分極: ,
磁気モーメントのスピンオンリー式: , ge = 2.00
合成スピン量子数: