表 4.B1 赤外/ラマン活性
活性不活性
赤外 0 = 0
ラマン 0 = 0

4.B 補足: 赤外・ラマン活性

 ここでは、多原子分子の振動モードの、赤外活性・ラマン活性について、 いくつかの例を示しながら解説する。
 以下では、x を振動座標, x0 を平衡構造 [最も安定な状態] における x とし、, をそれぞれ、双極子モーメント, 分極率 とする。

 活性・不活性は、x = x0 付近における、 (赤外), (ラマン) の x に対する変化率の一次近似が、有限の値をもつ (活性)0 である (不活性) か、によって決まる。(表 4.B1)

図 4.B1 CO2 1 振動による , の変化

例 1) CO2 1 (対称伸縮)

 CO2 分子は永久双極子モーメントをもたず、対称伸縮振動では 対称性は保たれるために、x に関わらず常に 0 であって、赤外不活性である。
 これに対して、x に沿って分子は大きさを変化させるために、 この振動は分極率を変化させる。従ってラマン活性である。

図 4.B2 CO2 2 振動による , の変化

例 2) CO2 2 (変角)

 変角によって双極子モーメントが発生し、その大きさは振動座標 x にほぼ比例するため、赤外活性。変角振動は x0 の両側で分子形が同じになるため、一次近似では、ラマン不活性

図 4.B3 CO2 3 振動による , の変化

例 3) CO2 3 (反対称伸縮)

 反対称伸縮は双極子モーメントを生成し、その大きさは振動座標に 比例するため、赤外活性。変角同様 x0 の両側の分子形は同じになるため、ラマン不活性